VvK 40 菅原布寿史キュレーション SUGAHARA Futoshi curation 採取と培養 Collection and Cultivation 2024年3月28日(金)から4月6日(日) 12時から18時 梅澤豊 UMEZAWA Yutaka 菅原布寿史 SUGAHARA Futoshi 山下和也 YAMASHITA Kazuya 吉田佐和子 YOSHIDA Sawako KUNST ARZTでは、VvK (アーティスト・キュレーション) 展覧会の40回目として、 菅原布寿史キュレーションによる 「採取と培養」展を開催します。 菅原布寿史は、シルクロードの遺宝美術と その歴史的変遷からのインスピレーションを軸に、 独自の古色表現を展開しているアーティストです。 本展は、古典的な文物の引用と転写を創作の プロセスに持つ作品で構成されます。 ロストワックス鋳造の梅澤豊は 「本阿弥光悦 俵屋宗達 ‘四季草花下絵和歌短冊‘」、 フロッタージュの山下和也は 「グレゴリオ聖歌ネウマ譜」、 コラージュ、リトグラフの吉田佐和子は 「モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール ‘ポンパドール夫人の肖像’」、 そして菅原布寿史本人は 「ベゼクリク石窟 第33窟 供養菩薩像」を それぞれ引用予定です。 渋く、アナログな世界をお楽しみください。 (KUNST ARZT 岡本光博) 「採取と培養」 美術の創作活動は、個人の特殊な才能に よるものとされる反面、知覚 → 認知(抽出・解釈) → 思考(転換・組み替え)→ 創造という、 入力から出力にいたる普遍的な情報処理プロセスの 一環と見ることもできます。 とはいえ、それはあくまで人類特有の知的な作業として、 他の生物とは一線を画するものとされてきました。 しかし、細胞レベル・分子レベルの精妙な生体システムが 明らかにされつつある現在、それは体外刺激の抽出・分解・ 合成といった生命活動をなぞったものに 過ぎないとさえ思えてきます。 本展は美術制作をそのような視点からとらえ直し、 古典的な文物の引用と転写を 創作のプロセスに持つ作品で構成します。 自らとは異なる時代や地域の体外刺激に対して、 現代の作家はどのような情報処理を行うのでしょうか。 菅原布寿史 (アーティスト、当展キュレーション) Press Release 「採取と培養」展覧会記録冊子先行予約受付中! A5スクエアサイズ、16ページ(多くなる可能性あり)、 テキスト掲載予定。 1500円。 希望される場合はメールしてください。 kunstarzt@gmail.com |
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梅澤豊 縁 2024 鉛(ロストワックス鋳造) |
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梅澤豊 土に還る 2022 鉛(ロストワックス鋳造)、アクリル板 |
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菅原布寿史 水煙(セラフィムV) 2021 麻布、アクリル絵具によるスクリーンプリント、箔 シルクロードの仏教遺跡に残る壁画の断片をサンプルに 構成単位として反復し、様々なイメージを構成しつつ 平面から立体へと展開する「菩薩シリーズ」の一つ。 東西交易の大動脈であったシルクロードでは 各地の文化や宗教が合流したことから、 仏教の図像を元にしながらも、 このシリーズは様々な宗教美術に見られる半獣半人、 両性具有などの多様なイメージを構成することを目的としています。 泉涌寺の寺名の由来となった泉が湧き出す水屋形を 展示場所とした本作では、インド発祥の水神ナーガ (五頭の蛇)と旧約聖書のセラフィム (六翼の天使/空を飛ぶ炎の蛇)という 東西の蛇のイメージを媒介として 水と火の二大元素を結びつけました。 |
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菅原布寿史 善妙方程式に代入された春信の町娘とその解 2022 絵巻:楮紙にサイアノタイププリント 蝶のオブジェ:楮紙にインクジェットプリント、鳥子紙、銀箔 鎌倉時代の絵巻「華厳宗祖師絵伝」(高山寺蔵)には、 唐の女性善妙(ぜんみょう)が、船で新羅国に帰る 留学僧の義湘(ぎしょう)を追って海に身を投げ龍に変身、 彼を海難から救うというエピソードが描かれています。 こうした変身譚の方程式に、都市の日常を描いた 鈴木春信の浮世絵「恋人の船を見送る娘」 (ホノルル美術館蔵)の人物を代入することで、 人の強い願望が生み出すファンタジーの 機能を示そうと試みました。 |
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山下和也 Trace of being(Chant) 2023 紙に拓本墨(自作の型紙を使ったフロッタージュ・ドローイング作品) 自宅にあった後期ルネサンス期の イタリアのグレゴリア聖歌の楽譜から型紙を作り、 フロッタージュ・ドローイングを行ないました。 譜面に関心を持ったのは私が譜面を読めないからです。 譜面を読める人が見た時に流れる旋律が私には浮かばず、 まったく視覚的なリズム以外に読むことが出来ない。 この、同じものを見ていても同じように見えていないという気付きが、 楽譜をモチーフとして扱うきっかけになりました。 この楽譜は16世紀の楽譜と伝わっています。 コットンペーパーに印刷され、実際に使用した痕跡や 手書きの補筆、修理、補強の後が随所に見られます。 多くの方がこの譜面を手に取り、 歌を歌い、また使い継いできたのかなと 想像させられるそんな楽譜の断片です。 譜面台を前に壁に整列された 譜面のフロッタージュは同じ譜面を使っていますが、 すべて異なる表情をしています。 それは歌い手のそれぞれの声を比喩的に可視化したように、 同じ旋律の譜面をそれぞれ異なる時間や 身体の運動を通してあらわれた 痕跡の集合として広がっています。 風に揺られ、ときどき壁の譜面のフロッタージュ・ ドローイングがしずかに音をたてて揺れます。 これは聞こえない音楽を視覚的に 現前させたインスタレーション作品です。 |
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吉田佐和子 ポンパドール夫人の日記 T 2024 版画紙、リトグラフ、コラージュ |
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吉田佐和子 ポンパドール夫人の日記 U 2024 版画紙、リトグラフ、コラージュ |
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